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手記:伊豆の踊り子を探すツアーを終えて 休日乗り放題切符を手に、静岡の鈍行プレイ、カントリーブルースのような。 生シラス丼はお目々がいっぱいでこわく、源兵衛川は冷たい川で候。 水の流れに沿って歩く。蟹座。水属性。 ちょうど一年前、この街に住むはずだった。 自分で反故にした話だ。 だけどどこにいても同じだぜ。 歩いていてふと横を見る。 「あ、あれは、富士山!?」 頭だけ見える富士山は永沢くんみたいだ。 あれは本当に富士山なのだろうか。 富士山は「登ってみたいかい?」と言っているようだった。 僕「うん、また今度」。 柿田川の湧き水の味、さんさん食堂の味、ともにきわめて平凡なり。 秋は夕暮れ、漫喫というところで眠れるような精神を持ち合わせていないので結局ほとんど、寝ずの番、じゃない寝ずの晩。ほんげぇ〜。しょうがあるめぇ。世知辛い世の中よ。 さて、伊豆の踊り子である。朝一番の電車で修禅寺駅に降り立つ。 この旅で初めて旅情らしきものが芽生えた。 修禅寺の浄め水が温泉の温かさでおかしく嬉しかった。 足湯で旅の疲れを癒す。いつか旅館に泊まれる日が来るだろうか。 このまま、下田まで行けたらどんなに良いか。川端康成が伊豆の踊り子を執筆した湯本館に行ってみたい。 おーい、伊豆の踊り子。そもそも探す気がない(ないんかい!)。痩身と粗チンのためである。温泉も湧き水も湧いているというのに、温泉に入る勇気はとうの昔に枯れ果ててしまっていた。 気持ちは土肥金山に向かっていた。現金な奴よのぉ。 世界一の金塊をペタペタペタペタ触りまくった。 き…金運を。私は…ロト7 を。 恐る恐る見ないでおいた七つの数字を見てみた。ふぅ…。お金ってなんだろう…。そんなことはもうどうでもいいのだ。 修禅寺駅の椎茸蕎麦、普通。鯵寿司、小さめの弁当だけど鯵が沢山でおいちかったよ。財布の中身は空っぽに。まあ何とかなるだろう。 帰り道、どこに帰ればいいのかわからないまま、疲れた脳みそや身体は、ぼんやり家らしき方向へと歩を進めた。 うっすら残った旅情だけが、ひそかに伊豆を縦走したがっていた。(完)
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